昨年末から、歯医者に通い始めた。
友人から何度か勧められていたのだが、なんとなく先延ばしにしてしまっていた。30歳にもなり、いい加減身体のことも考えてやるか、ということで予約をした。
私はこれまで虫歯ができたことがなく、歯医者とは無縁の生活を送っていた。ゆえに治療音が苦手…という理由で歯医者を嫌ってはいない。
それでもこの時期まで先延ばしにしていたのは、「なんとなく怒られそう感」があったからである。
歯は一生物、抜けたら生えてこない。親世代はこぞって歯を大切にしろと言う。なまじ虫歯がなく歯医者に行ったことがなかったので、これまで歯医者に来なかったことを怒られそうだったのである。
それでも重い腰を上げて行ってみると、特段怒られることもなくクリーニングが始まった。
勢いのある水とブラシで歯が磨かれていく。新感覚。
口内に水がドバドバ溜まっていくが、吸引機で吸われてもいく。それでも、吸われる前に喉に水が溜まる。
仰向けで喉に水が溜まるとどうなるか。呼吸が苦しくなるのである。
水を飲み込みたくなるが、削り取られた歯石も一緒に飲み込むことだろう。人体に影響はないだろうか。混乱する脳。
溺死の危険を感じ、思わず飲み込む。冷静になって考えてみると、もともと飲み込むべきだったものが歯に溜まったものが歯石なのだから、飲み込んでも問題ないだろう。
人は溺れると正常な判断ができなくなると言うが、どうやら本当らしい。
それからは躊躇せず飲み込むようにした。その後吸引機が挿入されるが、既に飲み込んだ後だ。残念だったなフハハ
途中歯茎に針を突き立てられて普通に痛い思いをしながらも、クリーニングは終了した。
案の定虫歯はなかったが、歯石の付着率が60%を超えており、出血もそれなりにあった。
いわく、歯周病の危険あり、らしい。虫歯になりにくい人は、その分歯周病になりやすいという説明を受けた。へーそうなんだ。
一般的に、歯のクリーニングは3か月に1回程度でよいとされている。
だが、私の場合は一度歯を完全にきれいにするために、1か月に1回の頻度で、6か月にわたって治療を必要とするとのことだ。
まあそれほど料金もかからないし、1か月に1度ならええか…と考え、毎月通うことに。
歯茎の中まできれいにするために、毎回歯茎に麻酔を打ってクリーニングを行った。痛みはないが、その後半日くらいは麻酔が解けないので、うまく喋れないし食べられないし、地味に不便ではあった。
結局、3回通ったところで十分きれいになったらしく、次からは3か月ごとで大丈夫です、とのお墨付きを得た。
最後の治療中、他の診察室から声が聞こえてきた。
「これ…今歯を1本抜くか、放っておいてあとで3本抜くかしかないですね…」という先生の声の後に、「え…」と答えて絶句する奥様の声。
そりゃあ歯を抜くと言うのはショックだろう。他人事ではないなあ、と思っていると、その後に衝撃的な一言が奥様から発せられた。
「いや歯を抜くのは全然いいんですけど」
いやいいんかい。精神強すぎんか?カイジかウシジマくんの登場人物か?
「いやーでも仕事が…」と聞こえてくる。
歯を抜くことより優先される仕事とは?というかこの歯医者年中無休だし休みの日に来ればよくないか?帝愛の地下帝国で働いてるんか?やっぱりカイジの登場人物だった。一日外出券で歯医者来てると思うと泣けるな。
その後の奥様がどうなったかはよく分からなかったが、とりあえず次回の検査は3か月後となった。
3か月後、改めてクリーニング兼検査を受ける。なんと歯石の付着率は70%を超えていた。増えとる…
「普段歯磨きで出血はありませんか?」と先生。「いやー全くないですね」と答える私。
夜の歯磨きは10分かけているし、それなりにちゃんと歯磨きをしている自負があったので、胸を張って答えた。
「この出血率だと歯磨きで出血する方が正常なので、ちゃんと歯磨きができていない可能性が高いですね」
ほらやっぱり怒られた。スミマセン。
歯周病の危険性がなくなるには、歯石の付着率が25%を切るくらいでないといけないらしい。
途方もない数字にめまいがしながらも、次回の診察は1か月後に逆戻りとなった。
正しい歯磨きは、歯と歯茎の間を磨くように行うらしい。たしかに歯しか磨いていなかった。
歯石は歯茎の溝に溜まっていくものなので、なるほど正しく磨かないと溜まる一方である。
1か月間、正しい歯磨きを意識して行った結果、前回のクリーニングの状態を保てていると言われた。
このぶんなら歯周病の心配もないし、次回から3か月間隔でよいと言われたが、すっかり自分の歯磨きに疑いを持つようになったワタクシ、間をとって2か月後に予約を取った。
行くまでは正直そんなに歯の状態がよくないと思ってなかったし、歯がきれいになると気持ちがよい。
みんなも行こう!歯医者!!!!!