真冬の道東旅行記 前編

3年ほど前、真冬に1人で北海道に行った。

どうしてわざわざ真冬に行ったのかははっきりとは覚えていないけど、友人から「今飛行機安いから行け」と言われたとか、そんな理由だったと思う。

前の旅行で鳥取に行き、47都道府県で行っていないのは、北海道だけになっていた。

気軽に行ける距離でもなし、年明けで繁忙期だったけど、同僚の顰蹙を言い値で買いながらも、3連休と合わせて5連休を取得して行くことを決意。

 

道東にした理由は、道内でもとりわけ行きたかった、神の子池と北きつね牧場があったからだった。

あと、どうせ真冬に行くなら、より寒い地域に行ってみたかったというのもある。

さすがにレンタカー移動をする勇気はでなかったので、現地での足は電車に頼ることにした。

防寒については、作業着が最強という情報を得ていたので、ワークマンだかでつよつよ防寒着を入手。厚手の登山靴も用意して、準備は整った。

 

 

1日目 女満別〜網走

早朝の飛行機に乗り込み、女満別空港に降り立った。47都道府県制覇の瞬間である。

北見行きのバスに乗り、車窓を見て過ごす。雪がほとんど降らない地域の人間にとって、雪景色はそれだけで珍しい。北見駅に着くのはあっという間だった。

 

この日のメインは北きつね牧場。北見から西に行った、留辺蘂にある。

バスで行くことになるが、その方面に行くバスは数時間に一本で、しばらく待つことになる。すぐ来るバスに乗って、6km歩くことも考えたが、その距離雪道を歩くのはアホだろ…と思い、やめておいた。

 

北見には、回転寿司で有名なトリトンがある。少し距離はあるが、開店時間までの暇つぶしも兼ねて、歩いて向かうことにした。

気ままに道を歩き、ふと気づく。暑い。

スマホを取り出し気温を確認すると、-6℃と書いてある。???????寒くない??????

どうやら氷点下でも、太陽が出ていれば暖かいらしい。

なおも歩き、開店と同時に入店した。開店前から行列ができており、最初の集団に入れたのはラッキーだった。

 

愛想のいいニーチャンにおすすめを聞き、初めて耳にするタチを注文した。鱈の白子らしい。

白子は好きでも嫌いでもないわたくし、口に入れてみて驚愕した。あまりにおいしすぎる。

口の中で瞬時に溶け、うまみが束になって押し寄せてくる。幸せを形にしたらこうなるのだと思った。

その後も気の向くままにたらふく食べ、お会計は3000円と少しだった。なるほどオトクだ。

 

北見駅に戻る道中、小高い丘にある公園に寄ると、坂に積もった雪を利用して、子供たちが段ボールでソリをしていた。

ソリなんて雪山に登った時の帰り、ケツワープをした時くらいしかやっていない。

少し羨ましくなったが、雪の処理の大変さを思い、羨望は2秒で消えた。夢のない大人………

 

駅からバスに乗り、北きつね牧場へ向かう。

以前に蔵王のきつね村に行ったことはあったが、その時は夏毛の時期だった。きつねは冬毛の方がよりかわいいと思っているので、期待に胸を膨らませて到着すると、果たしてそこには楽園があった。

園内は広くないが、所狭しときつねが歩いている。雪の上を散歩する子、木の台の上でケンカする子、木の上で昼寝する子…360°かわいい。住みたい。

人も少なく、心ゆくまで眺めることができた。

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大満足で牧場を後にする。北見に戻るバスは2時間ほど先だったので、近くにあった水族館に入ることにする。

1人で入るのは初めてだったが、もともと水族館は結構好きだった。クラゲをぼんやりと眺めていると、脳の回転が遅くなる感覚に陥り、心地よい。

その水族館にはクラゲがいなかったが、魚への愛が溢れる説明書きがそこかしこに並んでおり、楽しんで回ることができた。

 

バスで北見駅に戻る。宿は網走に取っていたので、ここからは電車移動になる。

例によって電車の時間はしばらく先になったため、駅の店を見て回っていると、おにぎり屋のおっちゃんに呼び止められ、もう閉店だからと、小さなおにぎりをいくつかもらった。あったけえ…

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網走は焼肉が有名な街だ。せっかく来た北海道、食にはお金を惜しみたくない。

有名な店に入り、気になった肉を片っ端から注文した。流氷ドラフトなる青い発泡酒も頼んでみたが、見た目はきれいなものの味はイマイチ。まあ発泡酒なのでね。

肉は美味しかった。一番美味しかったのはじゃがバター。

 

 

2日目 網走〜弟子屈

この日は神の子池に行く予定だった。冬は雪深く、池の近くまでアクセスできないため、ツアーに参加して、スノーシューで向かうことになっていた。

集合は昼に斜里駅だったため、微妙に時間を持て余す。網走刑務所には興味があったが、早起きして、しかも足早に見て回らなければいけない。ごはんが美味しい北海道、朝ごはんもしっかり食べたい。

早起きがなにより苦手な自分だが、せっかくなので頑張って早く起きることにした。

 

この日の天気は雪。特に朝は、なかなかの勢いで降っていた。

ホテルを後にし、国道に出てバスに乗り込む。網走刑務所は、現役で使われているものと、かつて使われて今は博物館になっているものがある。もちろん、目的地は後者だ。

慣れない早起きで眠くなり、ウトウトとしていた。バスの揺れってめっちゃ眠くなるよね。

 

ふと目を覚ますと、ちょうど刑務所前のバス停だった。慌てて降り、目的の建物へ向かう。果たして、現役の刑務所がそこにはあった。ベタすぎ。

バスは頻繁に走っているわけではない。歩けない距離ではないが、ただでさえカツカツのスケジュールだし、おまけに大雪だ。

来た道をトボトボと歩き、30分かけて駅に戻る。昨日は陽の光で暖かく感じたが、雪の降る今日はひどく寒く感じた。まあ、これはこれで旅の醍醐味でもあるかもしれない。

 

電車に乗り込み、斜里に向かう。オホーツク海を見るのは初めてだった。雪の降る海というものが、そもそも珍しい。

車窓を眺めて過ごすが、ひどく暑いことに気がつく。話に聞いたことはあったが、北海道の屋内は暖房がガンガンに効いている。

普通のズボンの上に防寒ズボンを履いていたので、防寒ズボンを脱ぐことでことなきを得た。防寒ズボンだけだったら、パンツになることも辞さなかったかもしれない。

 

神の子池のツアーは、平日だったこともあり1人参加だった。

インストラクターに森林の入り口まで車で連れて行ってもらい、スノーシューを履いて道無き道を進む。

ずいぶんと積もった日だったらしく、休憩中に雪を踏み抜いて片足が完全に埋まった時は、ブログに載せたいから写真を撮らせてほしいと言われた。いや助けてくれ

えっちらおっちら小一時間、慣れない足場に疲れながらようやく池に着いた。

 

神の子池は、光の差す角度や水底の砂地、豊富な湧水によって、鮮やかな青に光る池として有名だ。

数年前に写真を見かけて以来、ずっと行きたい場所だったが、この日の天気は悪い。

それでも、わずかにコバルトブルーに光る様子を見ることができた。

夏の早朝が、一番きれいに見える時期らしい。いずれまた訪れたいスポットとなった。

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帰りは夏道を通った。森の中よりだいぶ歩きやすかったが、それでも雪は深い。スピード制限の看板が埋もれかけているのは初めて見た。

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満足のいくツアーを終え、この日の宿、川湯温泉に向かうことにした。無人駅で相変わらず電車を待ち続け、駅に着いた時にはすっかり暗くなっていた。

駅から温泉までのバスが出ていたが、駅前にある地図を見ると、そう遠くないように見えたので、歩いて向かうことにした。

知らない土地に来たのなら、空気を吸いながら、なるべく自分の足で歩きたい。地図に記載されていた2本のニョロニョロに大して気を留めず、愚かな私はそう思った。

 

街まではほぼ一本道、街灯の少ない道を歩いていくが、歩いても歩いても街が見えてこない。

駅前で見かけた地図では、せいぜい300mくらいしか離れていないように見えた。さすがに妙に思い、手袋を外してスマホの地図を見る。

駅から街までは3.5kmあった。

 

時おり車が通って明るくなるが、すぐに私を追い越して辺りは真っ暗になる。文明はかくも非情なものなのか。

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房総自転車旅の頃を思い出しながら、1時間かけてようやく宿に辿り着いた。

ずいぶん歩いた1日になったが、この日は素泊まり、重い体を起こして近くの居酒屋に入る。

酒のつまみをいくつか頼んだが、一番おいしかったのはポテトコロッケだった。今まで食べたどのジャガイモよりもおいしい。北海道のジャガイモ、おそるべし。

 

 

案の定長くなったので後編につづく。遅筆!