あなたは痛みに強い人ですか?

こんな質問をされたことがあるだろうか。私はある。

 

時は2か月半前、ゴリラで有名なメンズクリニックに遡る。

長らく、髭剃りが無駄に思えて仕方なかった。毎日勝手に生えてきて、歯磨きと同じように生活に必須な行為かのような顔して居座る髭剃りを、どうにかして生活から排除したい。

歯磨きは別にいい。歯磨き中は片手が空くからスマホをいじっていても良いし、そもそも歯を磨かないと口の中が気持ち悪いし、虫歯などさまざまな弊害があるのだ。

だが、髭は剃らなくても別に問題はない。病気になることなどないのに、エチケットとかいう目には見えない圧力で、髭を剃らせようとしてくるのである。現代に蔓延る悪しきマナー。ビールのラベルと似たようなものだ。

おまけに、髭が生える速度は個人差がある。3,4日剃らなくても大して目立たない人も多いのに、毎日伸びる私のような人は、朝に剃っても夜には伸びてくる。伸びない人と比べると、何倍も髭剃りに時間を費やしているのだ。不条理不都合不公平。

 

人間を造りたもうた神に文句の一つも言いたくなるが、現代社会に生きるオトナなわたくし、金の力で解決することができる。

かくして、髭脱毛の門を叩いたのだった。

 

 

1時間ほどのカウンセリングを受け、髭が生える全箇所の脱毛を行うことが決定する。

コースは全6回だが、アフターケアとして、その後累計15回までは100円で受けることができる。効果がはっきりと表れるのは、大体10回くらいからとのことなので、15回受けるのはほぼ最初から決まっているようなものだ。

毛根の生え変わりの期間があるため、クリニックに通うのは2か月間隔になる。つまり、効果が出るのは2年弱が経過した時になる。え、なっが・・・・・・

料金は約20万円。まあ決して安くはないが、私の髭に対する憎しみに比べれば安いものだ。クレカがなぜか通らなかったので、下のファミマに走り、下ろした札束を受付に叩きつける。準備は整った。

 

いざ施術室に赴き、施術者に問われたのが、件の質問である。

自分が痛みに強いかどうかなど、人生で考えたこともなかった。大きな怪我をしたこともなければ、SMの趣味もない。痛み・・・?痛みってなんだ・・・?

学生時代の部活で、それなりにキツいトレーニングはやってたから、耐性はあるのかな?いや痛くはなかったよな?????よく分からないながらも、とりあえず「まあ人並みには強いと思います・・・?」と答える。

脱毛はある程度の痛みを伴うものだ。特に、髭は毛根が太めなため、痛みが強いらしい。歯科医などで使われる笑気麻酔や、さらに痛みを抑えるジェルなどのオプションがあったが、無論有料である。

先ほどは景気よく札束を手放したものの、正直なところ、これ以上の出費は避けたい。今回使う器具は比較的痛みが弱いものらしいので、とりあえず初回は麻酔なしで行い、痛みが強いようであれば次回以降は麻酔をつける、ということで落ち着いた。

 

 

ベッドに横たわり、照射に必要なジェルを塗られる。ああそろそろ始まるのかな・・・と思っていた矢先、「じゃあ行きますね~」という声と同時に器具を肌に当てられる。

いや思ったより早くない?もうちょっと心の準備とかいやていうか痛い痛い痛い痛いはあ?????????????????

 

尋常じゃなく痛い。これまでの人生で味わったことのない痛み。痛みのタイプが違うとか言う以前に強さが違う。激痛。

せいぜい、毛抜きで髭を抜いた時のちょっとチクっとする痛みがちょっと強くなるくらいかな、と考えていた。冗談じゃない。焼きごてを肌に当てながら、無理やり毛穴を広げてゴリラが毛根をむしり取ってくる感じ。あ、ここゴリラクリニックだった。そういうこと????

痛みで思考が四方八方に分散しながらも、手の甲に爪を突き立て、奥歯を食いしばり耐える。いやむり耐えられない

 

本当に意識が飛ぶかと思ったが、ふいに痛みが治まった。終わったらしい。

「じゃあ次は首に行きますね~」

まだあんのかよふざけんな

 

 

現代社会に生きるオトナなわたくし、涙をボロボロこぼしながら、思わずうめき声を漏らすと、「痛いですね~がんばってくださいね~」と声をかけられる。

なんかSっ気を感じる。そういう資質がある人は逆に楽しめそうだな、いやいっそのことそっち方面で楽しめば意外と耐えられるんじゃいやいてえ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~しぬ~~~~~~~~~~~~~~~

 

残すところは鼻下だけとなり、少し休憩する。

「結構痛そうでしたけど、鼻下は特に痛みが強いと思います。がんばってください!」と施術者。

最後に一番痛いところをもってくるとか、やはりドSか?美味しいところは最後に取っておくタイプか?僕もそうです(ショートケーキのイチゴは真ん中くらいに食べる(なぜならイチゴはショートケーキにおいて一番美味しいところではないから(ショートケーキのイチゴにヘタがついてるの微妙に嫌じゃない?)))

 

案の定激痛である。激痛を予見していたところで何の対策にもならない。あるのはただ痛みだけ。

左が終わり、右へ移る。ようやく半分だ。歯を食いしばりたいが、鼻下を伸ばすように言われているので、思うように食いしばれない。代わりに手の甲をいじめる。

ようやく右も終わり、これで解放か・・・と思った矢先、「じゃあ鼻下の上半分をやっておしまいになります」いや鼻下を更に分割するな

 

 

余命10年を読んだ時以来の号泣となったが、なんとか越えた。手の甲が抉れた。次回以降は麻酔をつけることを決意し、2回目の施術が今日。

酸素マスクのような器具から麻酔を吸うと、すぐに意識が朦朧としてくる。これならなんとかなりそうかな、あ、今ジェル塗られてるっぽいからそろそろかないや痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い普通に痛い

 

「鼻下の施術時はマスクを着けておけないので、麻酔はお守り程度に思っていてくださいね」

はい

 

 

あと13回残っているらしい。最終的には痛みが強い方の器具も使うらしいけど、どうなってしまうんでしょうね