壺おじさんは努力を怠っているのか?

壺おじさんが両手でハンマーを持ち続ける理由についての考察。

 

Getting over it というゲームがある。下半身が壺にはまったおじさんが、ハンマーを巧みに使って上を目指すゲームだ。

足を一切使えないので、進む方法は唯一、両手に握ったハンマーをオブジェクトに引っ掛けつつ上る、というものだ。

おじさんの筋力には目を見張るものがあるが、私はおじさんの怠慢に気が付いている。このおじさん、片手でハンマーを使わないのだ。

 

ボルダリングなどを体験したことのある方ならお分かりかと思うが、左右遠くに手を伸ばす時、「肩を入れる」ということが重要になる。壁に正対して腕を伸ばすより、壁に対して背中を垂直にすることによって、より遠くに手を伸ばすことができる。

これが何を意味するのか。おじさんは、しばしば、リーチぎりぎりの所にハンマーを突き立てなければならない状況に直面する。より深くにハンマーを刺せば、より安定するにもかかわらず、おじさんは両手でハンマーを操る。

体を前に向けたまま、両手を結んで前に伸ばすのと、そこから両手をほどいて片手だけ前に伸ばすのと、どちらが先に伸びるか試してみてほしい。後者の方が、先に伸びることが分かるはずだ。

つまり、おじさんは、一旦ハンマーを片手に持ち替え、ぎりぎりまで射程を伸ばした方が良い状況があるにもかかわらず、頑なにそれをやろうとしないのだ。これが怠慢でなくて、なんと呼ぶのか。

 

しかし、冷静になって考えるに、おじさんは誰よりも上に上りたがっているはずだ。ただの怠慢で、片手でハンマーを使わないということがあるだろうか。そこで、おじさんが両手でハンマーを持ち続ける理由について、考察してみた。

 

 

理由① 壺が重すぎて両手でないと支えられない説

真っ先に思い浮かんだ理由がこれだ。

壺おじさんは、どんな位置から落下しても、必ず壺を下にして落ちる。通常、壺にはまっていない人間が高所から落下する時、頭が下になる。人間の頭部は全体重の10%程度と言われており、筋骨隆々のおじさんなら、およそ7~8kg程度が頭部の重さだろうか。壺が、少なくとも7~8kgよりも重いことは確定した。

 

さらに、驚くべきことに、このおじさんは倒れることがない。壺が、頭よりも少し重い程度ならば、バランスを失って横倒しになることもあるだろう。それがないということは、壺がとてつもなく重く、どんな時も下向きになるということだ。

壺は、おじさんのおよそ半分を占めるが、横倒しもないということは、底面に凄まじく重い何かが貼り付けられているのかもしれない。

 

ともあれ、壺は相当重いということが予想される。それをハンマー1本で支えるおじさん、いったい何者なのか。筋肉にも驚くばかりだが、ハンマーの材質も気になってくる。

それにしても、壺がいくら重いとはいえ、それを宙に浮かせるだけの筋力をおじさんが保持していることも、また明らかだ。両手のように軽々と浮かせることはできなくても、片手で体をなんとか引っ張り上げるくらいはできそうではないか。

壺は重いことが分かったが、おじさんが片手でハンマーを使うことがない理由にはならなさそうだ。

 

 

理由② おじさんの両手がハンマーにくっついている説

下半身が壺にはまる事象と、両手がハンマーにくっつく事象。どちらが起こりやすいだろうか。どちらも起こりにくい。

おじさんは、いついかなる時も、ハンマーを手放さない。おじさんの筋力をもってすれば、不思議はないことかもしれないが、落下の衝撃に際しても、持っている場所すら一切動かないとなれば、これは何かあると見て間違いない。

ハンマーを自身の体に近づけて操る時も、腕を窮屈そうに捻りながら、左右に持ち替えている姿が確認できる。

 

これらはすべて、おじさんの両手がハンマーに接着されているという理由で、説明ができる。

理由は全く分からないが、そもそも壺にはまった理由だって分からないのだ。とにかく、おじさんの両手はハンマーに縛り付けられていると見た方がよさそうである。

 

 

かわいそうなおじさん。ハンマーを片手に持ち替えないのは、決して怠慢などではなく、壺にはまった上に両手がハンマーにくっつくという、不幸に不幸を重ねたがゆえのことだった。疑ってごめん。

 

 

 

【追記】

不幸な事故により、最初からやり直すことになった時に気が付いた。

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サボるな