ココアの通信販売にまつわるあれこれ

「ココアの店を将来出すなら、先に通信販売で名を広げた方が良いのではないか」という話をもらったので、その件についてあれこれメモ。

 

ココアの通信販売を成功させるとすると、既存の通信販売されているココアと、差別化をする必要がある。

また、将来の店につなげる、という前提を踏まえると、できるだけこだわりを持った商品を取り扱うべきだろう。

それを満たすものは、様々な産地のカカオをベースに作ったココアパウダーになる。

 

近年は特に、「ベネズエラ○○%」といったチョコレートがよく見られる。いわゆる本格的なチョコレートとして、様々なブランドが取り扱っており、人気が高い。

実際、ガーナやコートジボワールはバランスのよい風味、中南米は燻製香などのスモーキーな風味、東南アジアはベリー系の酸味、とそれぞれ特色があって面白い。

ネット通販でココアパウダーを調べてみても、カカオの産地を前面に売り出した商品は見当たらない。

様々な産地のカカオをブレンドすれば組み合わせは多岐にわたるし、扱う商品としては十分である。

 

ただし、これにはココア特有の問題がある。

まず、チョコレートとココアの違いについて触れておくと、すごくざっくり言って、製造過程で脂肪分を足しているのがチョコレート、逆に抜いているのがココアである。チョコレートは溶けにくく、ココアパウダーは簡単に溶けることからもイメージしやすい。

また、カカオは発酵食品であるため、酸性に偏り、酸味や苦味が強い。ココアパウダーは、アルカリで中和を行う、ダッチプロセス製法という製造過程を取る。

この2つの製造過程は、どちらもココアをまろやかな風味に仕上げ、飲みやすくするという目的のもと行われている。

脂肪分が多く含まれていたり、酸味が強いと、飲み物としては適さない。かつてはそのまま飲まれていたが、クンラート=バンホーテンにより、この製法が確立されたという歴史がある。

 

さて、脂肪分を抜くのは良いとして、問題はアルカリ処理である。

風味が穏やかになるということは、言い換えればカカオが持つ個性が薄れるということでもある。ココアを飲んで、燻製香やベリー系の酸味を感じたことがあるだろうか。私はない。

どうせアルカリ処理を行うのだから、産地にこだわり、特性を前面に出す必要がないということなのだろう。ココアパウダーを取り扱う卸を見ても、たしかにカカオの産地について触れている商品はない。

横浜税関を参照しても、原産国の上位は、その他と大きく開いてオランダやマレーシアとなっている。マレーシアにはカカオ農園があるが、赤道から大きく外れたオランダにはない。あるのは加工場だ。つまり、様々な産地のカカオ豆を、これらの国で受け入れて加工し、日本はそれを輸入しているというのが現状だろう。

少なくとも、様々な産地のココアパウダーを仕入れ、それを自分でブレンドして販売するという、比較的楽な方法は取れなさそうだ。

 

そうなると、アルカリ処理をしていないココアパウダーを手に入れる必要がある。

非アルカリ処理のココアパウダーは、一部に存在している。カカオ本来の風味が残ると同時に、カカオが持つ健康効果も多く残るとされ、健康志向で購入されることが多いようだ。

ただし、味はおいしくないという評価が多いほか、数が少ないこともあり、やはり産地ごとのココアパウダーというものは、存在していない。

 

結局のところ、産地ごとの特色を活かしたココアパウダーを販売しようとすると、自分で生産するほかなさそう、というのが現状である。カカオ豆の状態であれば、産地ごとの仕入れは容易であるし、コストも抑えやすい。

自分で生産するにあたり、必要な工程は主に3つ、焙煎・摩砕・搾油である。焙煎したものを砕くとドロドロの半固形状のものができあがるので、搾油でサラサラの固形状にすれば、それを砕けばココアパウダーになる。簡単ですね。

焙煎は、ローストしたカカオ豆を仕入れれば、工程をほぼカットできる。摩砕は、電動の石臼が3万円程度で手に入るし、難しいことはない。問題は搾油だ。

搾油は、油圧式の圧搾機で行われるのが一般的らしい。家庭用レベルの圧搾機を調べてみると、電動のものが多く、カカオの搾油に適しているかは不明である。

手動で油圧式の圧搾機も出てきたが、食品用じゃなさそうで、正直よく分からない。オリーブオイルなどを搾油できる電動式も出てきたが、これで問題ないのかもよく分からない。

 

いずれにせよ、それなりに初期投資のかかるものであるし、そもそも非アルカリ処理のココアパウダーが、砂糖を入れるなりすればおいしいと言えるレベルになるのか、そこがまず問題である。

というわけで買ってみたのがこれ。

Amazon | ” LifeJoy ” ナチュラル カカオパウダー 500g【非アルカリ処理】【ペルー産カカオ豆100%使用】 | LIFEJOY | カカオパウダー 通販

【楽天市場】ギラデリ チョコレート プレミアム ベーキング 100%無糖ココア 227g Ghirardelli社製 無糖100%ココア非アルカリ化ココアパウダーだからコクが違う素早く溶けてダマになりにくいのも◎サンフランシスコで1852年創業老舗チョコメーカー:米国サプリ直販店【アーウェル】

ギラデリの方が評判が良かったが、輸入品になるためまだ到着していない。

LifeJoyという方は今日届いたので、早速飲んでみた。

 

予想に反して、結構おいしい。砂糖を加えていることもあり、苦味はあまり感じない。むしろ酸味の方が強く感じるが、香りに乗る酸味(香りは「味」なのか?)よりも、飲んだ時に感じる酸味は、ずっと弱い。

産地の特徴を感じるかと言われると、正直飲み比べていないので分からない。ペルー産のカカオは、果実や花のような香りが強いとされているが、はっきりとは感じられなかった。

とはいえ、おいしいと感じられる範囲で、比較的簡単に、産地ごとのココアパウダーを生産・販売できそうなことが分かってきた。

 

比較的簡単と言っても、機械の導入自体に数万円のコストがかかるし、石臼と圧搾機の2種で本当に賄えるかも不明だし、機械を持っている人を頼って実験したくないか???になっている。

去年、都内のチョコレート屋が主宰する、チョコレート作りに参加した。その時も、卓上の電動式石臼を使って作ったので、その人に話だけでも聞いてみようかなという気持ち。

 

どのくらい手間がかかるかによって、仕事と並行してできるかが変わってくるので、いつやるか、やれるかは不明。無職だけど。

そういえば、ここ最近、やたらと原産地に行くことを勧められている。めちゃめちゃ興味はあるし、たしかに将来取り扱うなら知っておくべきことが多く学べそうな感はある。一般人が参加できるツアーのようなものは多くないので、何かしらの人脈を作って同行したいわね